ミステリ(海外)

『その女 アレックス』(2015.2.12 tanakomo)


フランスのミステリです。すごいです!

著者にとってはこれが2作目で(デビュー作でコニャック・ミステリ大賞ほか4つの賞を獲得したそうです)、そしてこの作品でイギリス推理作家協会インターナショナル・ダガー賞受賞を受賞し、日本でも「このミステリーがすごい」、「週刊文春ミステリーベスト10」ほか4つのミステリ・ランキングで1位となりました。

とにかく先の展開が読めない、逆転に次ぐ逆転、ラストですべて明らかになる秘密!なんて感じで、書評家のみなさんが「そそる」文句を書いていたり、拷問のシーンはかつてない迫力!とかもういろいろ絶賛されていた作品だったので、まあ出張のお供にでも、ということで買ってありました。

で、出張ではなかったんですが、ふと部屋で読み始めたらもう止まらない。(しまったぁ、って感じでした)

1日目の夜で一気に半分読んで、「すげぇ!」って感じで、2日目の夜はもう覚悟してホットカーペットに毛布かぶって何時になってもいいぜ、って感じで読み終えました。

いやあ、ヨーロッパのミステリってこれまでもいろいろ紹介してきましたが、明らかにアメリカのとは違いますね。陰鬱でけっこう残酷で、でも物語に深みがあってユーモアも(それも上質な)あって、じっくり読ませます。

ミステリ好きな方にお勧めします。

あ、この作品に限っては、ネタバレは絶対に「だめ」なので、作品を読む前にアマゾンの読者レビューなどは「絶対に」読まないようにしてください!!




『今日から地球人』(2015.2.7 tanakomo)


設定はSFなのに、ミステリとして最優秀長編賞にノミネートされて、じゃ、ミステリなの??いやいや、「人間」や「現代社会」を描いた作品でしょ(フナツにはミステリだとは思えなくてここ「ミステリ」ジャンルに入れようかどうか迷いましたが、まあ世間的にはミステリってことで)っていろいろ声が上がりそうな・・不思議な作品です。


そして・・・、とてもセンチメンタルで切ない小説です。
「素数」とか「ドレイク方程式」も出てくる不思議な小説です。

著者はイギリス人です。


こういう淡々としたユーモア&ペーソス流れる作品はやっぱりイギリスが本場なのかなと思わせます。

ちょっと本の帯から、
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アメリカのミステリ界の最高権威である<アメリカ探偵作家クラブ>の最優秀長篇賞にノミネートされた本書。他の候補作がサスペンスや法廷ミステリといった直球のミステリだったのに対し、本書は変化球のミステリともいうべき作品。人間殺しの任務をおった異星人が、人の優しさに触れ、人間として生きてゆく決意をする<“ヒューマン”ドラマ>が高い評価を受けました。宇宙人の目を通して人間の良さを発見できる心温まるミステリです(宇宙人と犬の会話も愛らしくてきゅんときますよ)。
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はい、確かに異星人と犬のニュートンとの会話は胸キュンでした。

さて、物語は冒頭からけっこう波乱の幕開けで、地球に降り立ったばかりの異星人は地球がこんなふうに見えるのかなという(もちろん地球人が考えた)視線がとてもユニークです。

でも、フナツが読んだ感想としては(本の帯にあるように人間の良さを発見するよりも)合理的&理性的な異星人から見た「人間の愚かさ」のほうがけっこう胸を打つものがありました。

著者は小説の中のキャラクターに言わせるという格好で、自分が日頃言いたいことをいろいろ書いてるんだろうなと思います。皮肉な口調で。

けっこう長くていろいろ引用するのが大変なので一箇所だけ。
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「なぜみんなもっとこうしないんですかね」とわたしは話の口火を切った。
「するって何を?」
「酔っ払うことです。公園のベンチに座って。問題を解決するには、いい方法だと思いますよ」
「からかってんのか、あんた」
「いえ。いいなと思ってるんです。あなただっていいと思ってるはずですよ。そうでなければ、こんなことしてないでしょう」
 
 もちろん、これにはいささか嘘があった。人間はいつも自分のしたくないことをしているのだから。それどころか、実際にはいつの時点でもせいぜい0.3%程度の人間しか、自分のしたいことをしていないし、しているときでもそれについて激しい罪悪感を感じていて、すぐにまた恐ろしくつまらないことに戻るから、と熱心に自分に約束している。(P344〜345)
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他にも、P.78とかP.354とか、ホント人間って利己的でどうしようもない奴だな、地球上の生き物にとっては疫病神だな的なことが書いてあって「激しく同意!」なんて感じで読んでました。

かと思えば、ミステリ小説なのにこんな哲学的記述もあったりして・・・。(P.319)
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 「愛してるわよ」と彼女は言った。
 その瞬間、わたしは愛の要諦を知った。
 愛の要諦とは、人が生きながらえるのを助けることだった。
 そして意味を忘れることでもあった。見るのをやめて、生きはじめることだった。愛の意味とは大切に思う誰かの手を握り、現在を生きることだった。過去も未来も神話だった。過去とはすでに死んだ現在にすぎず、未来はどのみち存在しない。われわれがそこに到達したときはもう、現在になっているはずなのだから。現在だけが存在するのだ。絶えず動き、絶えず変化する現在だけが。だから現在は気まぐれだった。手放すことでしかとらえられなかった。
 だからわたしは放した。
 宇宙のすべてを放した。
 彼女の手以外はすべて。
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そして、家族愛、特に父親から息子への愛がなかなか感動的でした。
夫婦愛に関しても素晴らしいのですが、こちらはちょっと屈折してます(ははは、なぜかは聞かないでください、読んだ後のお楽しみ)。

最後のほうの、父(のようなもの)から息子(という関係に似たもの)へ向けて書かれた「ひとりの人間へのアドバイス」97個(P.384〜)が最高です。

これだけまた何度も読み返したい。

さて、最後にもうひとつ本の帯から笑えるキャッチコピーを。

「昨日までは人間を倒すつもりだった。今日からは人間を守ることにした」

お買い上げいただいて損はありません。
ただし、ピーナツバターのサンドイッチが食べたくなったり、ドビュッシーやビーチボーイズが聴きたくなったりしても、それはフナツの責任ではありません。




「白雪姫には死んでもらう」(2014.7.16)

 

久しぶりの「本の紹介」なのでちょっと長いです。
海外ミステリに興味のない人はスルーでお願いします。

前作『深い瑕』(2012.7.15 にここで紹介)がとてもおもしろかったので、今度も間違いないだろうと思い即買いでした。はい、前作を凌ぐおもしろさでした!!

この手の本(良質なミステリ)は、ある程度まとまった時間があるときに(新幹線・飛行機、出張先のホテルなどで)読んだほうがいいと思っていたので、買ってからしばらく読みたいのを我慢してとっておいてありました。

この手の本を細切れに何日もかけて読むのはもったいないんですよね〜。(せめて数回に分けてでも)十分に時間を取って読むと至福の時間が過ごせます。

って言いながら手に取ったのは忙しさもピークの先週中頃(もう忙しくて頭がはち切れそうで、癒しを求めて思わず手が伸びてしまった・・・)、フナツは忙しい時に限っておもしろい本に手を出してハマってしまって結局もっと忙しくなるというジンクスがあるんです(みなさんもありませんでしたか?テスト前におもしろい本にハマってしまうとか・・)。

また前置きが長くなりそうなので本の紹介にいきます。まず特筆すべきはこれがドイツミステリの翻訳だということです。ヨーロッパのミステリもなかなか捨てたもんじゃない。

ドイツの作家の作品もボチボチ翻訳されていますが、まだまだ圧倒的に英語圏の作家(英語で書かれている作品の翻訳)のほうがが多いですからね。さまざまな言語の翻訳者に頑張ってほしいですね。

そして、さきほどHP内を探してみて、どうもここでは取り上げていないようなんですが(また書きますね)、世界的ベストセラーになったドイツ発SF冒険小説、フランク・シェッツイング「深海のYrr」もまた非常におもしろくて、ドイツなかなかやるじゃん、なんですよね。

この作品は、最初ざらついた雰囲気で始まり、どんな話かなと思う間もなく、とにかくちょっとこの話には裏があるぞ、ってことが感じられるような、からまりあった話が、徐々にほぐれていって、また新たに真実が明らかになって、もうこれでもかって感じで、なんかメインディッシュが何度も出てくるって感じで・・・、すいません、わかりにくいですね。

でね〜、ぐいぐい引っ張られるんですよ。

ちょっとネタバレしない程度に「解説」から引用します。
解説者は本書のストーリーに少しふれてこの作品の特徴を説明した後、こう述べます。

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 もうひとつの大きな特徴として、登場人物たちの奥行きの深さにも触れておこう。入り組んだ事件の構造が少しずつ明かされるたびに、様々な人間が強い思惑を秘めていたことが見えてくる。彼らが接触と交錯を繰り返すことで、一連の物語を通じて無数のドラマが演じられる。
(中略)
 本作の見所は他にもある。タイトルに掲げられた「白雪姫」は殺された少女の渾名であると同時に、プロットの底流を成すモチーフでもある。
***

このくらいにしておきましょう。ふふふ、後は読んでのお楽しみ。

ちなみに「白雪姫」が収められている『グリム童話』というのは、実はもともととても残酷な民話を集めたものでした。グリム兄弟がそれにかなり手を加えて、それから版を重ねるごとに改変していった(残酷じゃないように)ものなんです。

『グリム童話』初版において、王子様は「ネクロフィリア」だったんです。(ネクロフィリアがわからない人は調べてください、あまり日本語で書きたくなかったので)どうでしょう、ちょっとミステリ仕立てでしょ?

さて、前作『深い瑕』も、この本も、この作者による警察小説シリーズ「刑事オリヴァー&ピア」の中の一作です(3作目と4作目らしい)。そうです、他にまだ翻訳されていない本が残っているというわけです!

他の作品が翻訳されて読めるのを楽しみに待ちます。

 

 

 

 

『川は静かに流れ』(2013.2.5 tanakomo

 

ミステリ評論家の方々が絶賛していたので思わず買った本です。
「すごい」のはわかるけど、少々フナツの好みではなかったかな・・。

でも、先日アップした「キリング・フロアー」や「アウトロー」を読んで、「よくできたミステリだけど、やっぱりこれはどちらかというとエンタメだね」なんていう感想を抱かれた方にはお勧めではないかと思います。

文体及び構成は緻密で、冒頭にある著者の謝辞にも「これは家族をめぐる物語である」とあるように、これはアメリカの田舎と犯罪、そしてそこに生きる家族(ちょっと普通じゃないけど、でもエピソードは世界共通)の愛(いびつな形の愛情もある・・)を描いています。もちろん男女の愛と男同士の友情もある。

 

物語は最初から少しざらついた雰囲気で、それが最後まで明るい雰囲気になることはありません。でも、たくさんの伏線と、次々に明らかになる事実など、謎解きが好きな人にはたまらないと思います。

最初、緩やかに物語は進み、いろいろなエピソードが語られ、そして後半の後半に至って、圧倒的なスピードで謎が明らかになっていきます。

まさに重厚なミステリ、2008年度アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞(エドガー賞)受賞作品です。

最初にも書きましたが、「すごい」んだけど、諸手を上げて「絶対おもしろい」とは、ちょっと言いにくい。

しかし、こういう作品にハマる人はハマるだろうなと思います。
読了後、しばし「うーーん」と余韻に浸ったことは否定しません。いろんなことを考えさせられる作品でした。

みなさん、ぜひ<この人がおもしろいと言ってたら即買い!>という評論家を個人的に見つけましょうね。(この本の解説者の絶賛は決してフナツの絶賛にはつながらなかったなぁ・・)

 

 

 

 

『アウトロー』(2013.1.24 tanakomo

 

先日『キリング・フロアー』を紹介しましたが、今回は映画化される『アウトロー』です。

キリング・フロアーをアップしたときにも書きましたが、実におもしろい!!

解説の池上冬樹さんがこの作品の魅力をきちんと書いてくれているので引用します。

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 いまだに僕は、リー・チャイルドのデビュー作『キリング・フロアー』を読んだときの昂奮を覚えている。凄い作家が出てきたものだと心の底から驚いた。放浪生活を送る元軍人のリーチャーが身に覚えのない殺人容疑を負わされた背景を探る物語は、冒頭から読む者をひきつけてやまなかった。アクション・ヒーローでありながら観察が鋭く、ほとんどシャーロック・ホームズばりの推理力を誇るのにびっくりしたし、その読みの鋭さが敵との対決で発揮される場面にはわくわくした。銃器と格闘技に関する細部が半端ではなく、まるで自分が戦っているかのような感覚を抱かせた。活劇場面は喚起力に富んで生々しく、サスペンスはぞくぞくするほどある。アクション小説(映画)の神髄のひとつともいっていい通い合う心意気もあるし、ひそやかに醸し出される抒情もいい味を出している。
(中略)
 ひとつひとつ証拠をあたり、謎を解き、あらたな真相を明らかにしながら、さらに奥に別の謎があり、別の真実が潜んでいることを示していく。格闘する相手を見る、現場を見る、部屋に入る、銃を見る。そのすべてにおいて、ひとつひとつ特徴を見いだし、背景を探っていく。きちんとしたものを手がかりにして謎を解いていく。
 繰り返すが、いやあ面白い。まさかここまでひねりのある物語とは想像もつかなかったし、単純な設定のさほど複雑な物語ではないと思わせておいて、次々にひねりを加え、中盤以降がらりと変わってくる。伏線の張り方が見事で全部生きてくる。本書『アウトロー』はアクション小説の傑作であるが、伏線が周到に張りめぐらされた本格ミステリの傑作でもある。本格ファンも必読だ。つまりミステリファンなら誰もが満足する作品なのである。ジャック・リーチャー・シリーズがいかに凄いかをあらためて認識してほしい。読んで絶対に損はしない。
(解説、368ページ〜)
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ホント、おもしろい本は「幸せな時間」を提供してくれます。

 

 

 

 

『キリング・フロアー』(2013.1.20 tanakomo

 

コレ、お勧めです!!

どうしてこんなに忙しい時にこんなにおもしろい本に出会うんだよぉー!!と読みながら心の中で叫んでいました。

みなさんもよくそんなことありませんでしたか?
テスト勉強をしなくちゃいけないときに、ふと手にとった本がおもしろすぎて勉強できなかったとか、仕事が忙しい時に本屋さんでおもしろい本を見つけてしまうとか・・。

一種の現実逃避なんでしょうけど、おもしろいのはおもしろい。

実は、この作品の著者は、今度トム・クルーズ主演で映画になる「アウトロー」の原作を書いた人で、アメリカではすごくファンが多い超有名(フナツはついこないだまで知らなかったんですが・・)な作家です。

そして、この『キリング・フロアー』はそのリー・チャイルドさんが1997年に上梓した処女作なのです。(日本では最初2000年、この本は新装版です)

でもって、フナツはその『アウトロー』にやられてしまって(もう、一晩で一気に・・)これは他の本も絶対読むべきだろうと(忙しいくせに)買ってしまったわけです。

『アウトロー』をここでアップするときは気合いを入れて紹介しようと思って、結局伸び伸びになってしまっていますが、この『キリング・フロアー』は今まさに電車の中で読み終えて興奮状態なのでこちらを先にアップします。

『アウトロー』は、この後また暇を見つけてアップしますね。

ジャンルとしてはミステリーなんだけど、本の宣伝文句にあるように「アクション巨編」といったほうがいいかもしれません。

書き方が実にうまい、型破りな主人公なんですが、ここで書いてしまうと読む楽しさ、おもしろさが半減するので、書きたいんだけど書けません。

読んでいくうちに主人公のプロフィールが徐々に明らかになり、そして翻訳者の小林宏明さんが指摘するように「演繹的推理力抜群」そして「行動力抜群」の主人公が巨悪を暴いていくわけです。

アメリカの犯罪を描くときに避けて通れない残虐性はもうしょうがないので、ちょっと凄惨なシーンもありますが、少しずつ事件を解明していく、そして主人公が幾多の危難を乗り越えていくところが、ホント読ませます、って感じです。

ちょっとこれまでのミステリーに登場するヒーローとは少々違うパターンです。

アンソニー賞最優秀処女長篇賞受賞作です。

読んでいて、何かで読むのを中断しなきゃいけないのが実につらい小説です。

 

 

 

 

『深い瑕』(2012.7.15 tanakomo

 

ちょっと疲れたなぁと、現実逃避したいときにぴったりなのが、海外の極上のミステリ小説。

ケーブルテレビを観ている人ならわかると思いますが、アメリカの犯罪ドラマ「メンタリスト」や「ロー&オーダー」、デンマーク(かどこか、ヨーロッパだった)の「キリング」など、海外のミステリドラマはすごくレベルが高い。

日本のミステリにも、もちろんおもしろい作品はありますが、とりあえず最近フナツが一気に読んでしまった極上ミステリを紹介します。

あらすじなどは作品紹介を読んで頂ければわかりますが、プロットがよくて、人物描写がまたいい。ドイツの近現代史の勉強にもなって、謎解きがまた楽しい。

ドイツですごく人気の警察小説シリーズです。

 

 

 

 

『ナイロビの蜂』(2011.11.3 tanakomo

大人のためのミステリーを、という御所望がありましたので、じっくり読めるものを紹介します。言わずと知れたスパイ小説の大御所、ジョン・ル・カレの新作です。歳とともに円熟味を増してますね。
国際的製薬会社と多国籍企業の暗躍、アフリカの闇、妻を殺された外交官が真相究明に乗り出し、徐々に明らかになっていく事件の全貌。
壮大なスケールで構成されたプロット、細部まで緻密に書き込まれた描写。ル・カレの小説を秋の夜長にどうぞ。上・下巻あります。

 

 

 

レポメン(2011.11.3 tanakomo

さきほどの本が、シャーロック・ホームズなどの系譜を引く伝統的なイギリス(ヨーロッパ)の極上ミステリだとすれば、この本は、ハリウッド的なまさにアメリカの近未来SFミステリです。
人工臓器が発達し、人間が病気から逃れることができるようになっても、その高価な人工臓器の支払いをローンで払う人々がいる。そしてそのローンが払えなくなると、お金の代わりにその臓器が取り立てにあう。
この物語は、その取り立て(Repossession)屋の話です。
不条理な暴力の世界を、コメディタッチで描く、なんかとてもアメリカだなって作品です。さきほどのル・カレとはとても対照的ですが、あわせてどうぞ!

 

 

 

 

『さらば、愛しき鉤爪』(2011.11.3 tanakomo

でもって、エリック・ガルシアを紹介したんなら、この「鉤爪」シリーズを紹介しなきゃ片手落ちでしょう!!ってことで、「恐竜の探偵」です。
えーと、主人公はロサンゼルスで人間にまぎれて暮らすヴェロキラプトルなんです。
なんで恐竜なの??
ははは、それは読んでのお楽しみ。
こちらはアメリカのミステリの伝統である「探偵ハードボイルド」もの(のパロディ)です。
でも、文章はかっこいいし、謎解きもなかなか。シニカルなユーモアもあって、さらりとキメてくれます。読んでおもしろい、まさにCOOLな小説です。