『吉野弘詩集』ハルキ文庫 (2016.1.3 tanakomo)
(詩集はエッセイというカテゴリにとりあえず入れておきます)
とりあえず今日、仕事部屋の床の上の本や書類を片付けましたぁ。そして見えてきた床を掃除しました。
借りてる仕事部屋は普通のワンルームなので、キッチンも風呂も付いてるんですが、ほとんどそちらは使ってないので、掃除は簡単で年末には終わってたんですが、本棚の整理(まあとりあえず見苦しくない程度に)と、床を占領していた本&書類がまだだったので正月休みの本日、チャレンジしたというわけです。
机ん上は?っち、聞っ人(し)があいかもしたん。(←フナツが大好きな鹿児島弁です)
はい、机の上は左半分がキレイになっております。(机の横幅が140はありまして・・)右半分は・・、明日かなぁ。
で、いろいろ整理すると必ず「あ〜!コレ〜!」ってな感じで読んじゃうんですね〜。
はい、久しぶりに手にとって、やっぱりいいなぁって思ったんでアップしときます。
「夕焼け」や「祝婚歌」、(そしてフナツはこの本で知ったんですが)「I was born」などの詩で有名な吉野弘さんの詩集です。
ひとつだけ引用します。
「祝婚歌」とありますが、恋人同士、愛し合ってる二人、一緒にいるパートナーがいる人なら、心に響くかと・・・。
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二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派過ぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと氣付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちのどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい
**
あ〜、明日も部屋の片付け(&書類整理、イベントアップ等々)頑張ります!!
(ここまではやらなきゃっていう)今日の目標には全然達してませんが、多少はすっきりしたのでとても気持ちいいです!!
ではでは、
『辛口・幸福論』新講社(2014.10.7 tanakomo)
曽野さんの本はここでも何冊か紹介してますが、この本は曽野さんのさまざまなエッセイ集の中から珠玉の文章を選んでまとめたものです。
解説文には以下のようにあります。
***
著者のこれまでの著作から、「生き方」「幸福とは」について述べた核心を抜粋、再構成したエッセイ集。きっぱりと生きる覚悟のある1冊
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ちょっと大げさかもしれませんが、口語訳された哲学書、こなれた書き方の警句、という感じです。
少々強面の、でも実はとっても優しいオバさんから(おバアさんかな・・、もう83歳でいらっしゃる)小気味良く叱られている感じです。
フナツは「いいな」と思った箇所のページの端を小さく折ります。後でゆっくり読み返すためです。この本は、実にたくさんのページを折ってしまいました。
たくさん紹介したい話はあるのですが、長くなるのでひとつだけ紹介しますね。
曽野さんは、聖書の中にある有名なぶどう園の話を引用して、誰かが「それは当然だろ」という理論に対立する理論もまた「当然である」ことを書きます。
あるぶどう園の持ち主が、早朝、労働者を集めて1日1デナリ(通貨の単位)の労賃で契約し、自分の果樹園で働かせました。しかしまだ職にあぶれている人がいたので9時、正午、午後3時、さらに午後5時にも雇いました。日没までほんの1時間くらいしか働かなかった労働者にも1デナリ払ったので、早朝から働いた人たちが文句を言いました。
さて、みなさんはどちらに味方しますか?
ぶどう園の持ち主は、その文句を言った人たちにこう言います。
***
「私は何も不正はしていない。あなたとは1日1デナリで契約した。だからそれだけもらって帰りなさい。私は少なく働いた人たちにもそれだけ払ってやりたいのだ。それに自分のものを、自分が使いたいように使うのは自由である。それとも、あなたは私が気前良く人にやることをねたんでいるのか」
***
そして、曽野さんはこう続けます。
***
この物語は実にさまざまなことを訴えている。人間は自分がきちんと払ってもらっても、他人の幸運が許せないこと。そういう時には「正義」を持ち出すこと。労働者の言い分ももっともなら、ぶどう園の持ち主の言い分ももっともなこと。従って、当然の理論に対立する論理も又、当然だということがあり得るという事実である。(p.36)
***
いいですね〜。
「我こそは正義だ」って大上段に構える人が多い世の中はなんかちょっとウザいですよね。
そして、本の帯から、
・口当たりのいい「良識」や「善意」のウソ
・完璧主義は人を幸せにしない
・「ものぐさ」「怠け者」礼賛
・「人は誰でも平等?」そんなバカな
・人間がそれぞれ違うがゆえに尊厳がある
ちょっと人生や人間関係に疲れていて、ちょっと喝を入れてほしい人。
「大丈夫、頑張って」とか「あなたの思う通りにやりなさい」なんていう、一見優しそうな、しかし実のところまったくアドバイスにはなっていない言葉に疲れている人にお勧めの本です。
あなたを縛り、あなたを疲れさせている、世の中の「常識」というものを、この本を読んでもう一度見直してみてください。きっと心晴れる思いがすると思います。
『管見妄語』(2012.10.13 tanakomo)
10月の新潮文庫の新刊は、めずらしく、先日書いた加藤廣『宮本武蔵』上・下、北方さんの「日向景一郎シリーズ」、そして『女信長』と買いたい本がけっこうありました。
そして10月ではなかったのですが(6月)これも新潮文庫です。
この本は、週刊新潮の巻頭名物エッセイ「管見妄語」をまとめた本です。
このエッセイが好きで、週刊新潮を置いてあるカフェによく行きます。(申し訳ないですが、雑誌そのものはあまり買う気になりません、ちょっと全体的にトーンが暗いし・・、雑誌の読者の想定としては団塊の世代の方々向けなんだろうなと思います)
藤原先生(数学者、お茶大の教授でした)の書かれるものは、ユーモアがあり、機知に富んでいて、フナツはとても好きです。
ちょっと気持ちが落ち着かない時、世の中いろいろあるよな、と思ったときの清涼剤みたいな本です。
ひとつひとつのエッセイは、週刊誌の1ページ分なので、どれもすぐに読み切れる長さです、とても読みやすいと思います。
ぜひ、本屋さんでどこか開いたページを立ち読みしてみてください。
で、なかなかおもしろいなと思ったら、そのままレジへ直行です。だって、安いし、薄い。コーヒー1杯くらいの値段でけっこう楽しめます。
『常識にとらわれない100の講義』(2012.9.25 tanakomo)
以前ここで森センセイの「つぶやきのクリームを」の紹介をアップしましたが、その第二弾です。
見開きでひとつのテーマというか、ひとつのエッセイになっていて、とても読みやすいです。
アマゾンのこういったサイトには、いわゆる「カスタマーレビュー」というものがありますが、あまり信用しない方がいいんじゃないかなと思います。そもそもこういうところにカスタマーレビューを書くという人たちは(あくまでもフナツの独断と偏見で申し訳ないですが)自己主張や自己顕示欲が人より多少強そうな人が多いと思うので、あまり影響を受けないように気をつけてください。
まあ、ちょこっと本屋さんで立ち読みしてどんな感じかみてくださいね。
フナツは森センセイのこういったエッセイが大好きです。
『悩むが花』(2012.8.3 tanakomo)
週刊文春の(大人気!!)人生相談が本になりました!!
週刊文春という雑誌があまり好きじゃなくなった理由は以前ここにアップしましたが、この人生相談が読みたいというだけで、週刊文春が置いてある喫茶店に行くこともあります。
おもしろいです。(これは独断と偏見ではなく、けっこういろんな人にお勧めします)
前期試験の採点をする合間に(けっこう疲れるんです、これが。4つのクラスの試験で、少ないクラスでも15人くらいから、多いところだと30人分以上あるんです・・)、休息のために読んでいます。
以前からよくここでアップしている、愛すべきオジサン(なんて言ったら絶対御本人からは叱られそうだけど)伊集院さんが、さまざまな読者からの悩みに「喝!」を入れています。
それがとても痛快!!(フナツもこういうオジサンになりたい)
どれかおもしろい相談と回答をここで引用しようと思って、「これは」と思うページの端っこを折っていたら、すごくたくさんになってしまって・・。
本屋さんでぜひ立ち読みしてください。
たぶん(いや、必ず)伊集院さんという人が好きになると思います。
もちろん、それぞれ読む人によって、おもしろいページは違うと思います。
まあ、個人的には、初っ端5ページとか、43ページとか、89ページとか、124ページとか、126ページとか、147ページ(どんどン出てくるのでやめます)がよかったかなぁ・・、タケダテツヤ風に言えば「この、バカどんかぁ」って感じですね。
みなさん、どの相談と回答がおもしろかったか、読んだ後こっそりフナツに教えて下さい。
『人間の基本』(2012.6.28 tanakomo)
曽野綾子さん、ホント骨のあるオバさまです。
この人のエッセイ大好きです。
ちょっと引用します。
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我が身に困ったことが降りかからなければいい、ということになると、何もしないのが一番で、何もしない限りは安泰、という判断になります。人生はいつもある程度の危険と引き換えにして、初めて何かを得られると私は思っているんです。もっともこういう見方を人に押しつける気持ちは全くありません。これは生き方の趣味の問題ですから。ただ、すべてのものには対価を支払わなければならない、というのは私の基本的な考え方ですね。(117ページ)
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筋金入りのクリスチャンで、作家にして日本財団の会長で(もうお辞めになりましたが)政情不安なアフリカ諸国に毎年のように(財団が寄付したお金の使い道の)調査に行く方です。御年80歳でもです。
戦争も体験し、地に足をつけた活動を何年もされてきて、書かれる言葉が筋金入りって感じです。
もうひとつ引用を、
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だいぶ前のことですが、私が携わっている海外邦人宣教者活動援助後援会(JOMAS)から『国境なき医師団』へ寄付をした縁で、日本での後援会に招かれました。講演が終って質疑の時間に移った時、日本側の学生らしい質問者の一人が尋ねました。
「あなががたは、活動する国での医師法をどうクリアしているのですか?」
彼らは世界じゅうの硝煙立ち込める紛争地や、被災地の瓦礫に囲まれて非常時の活動をしているのです。フランスの医師は一瞬絶句してから、逆にこう言いました。
「そこに怪我をした人がいる。私たちは医師としての技術と、医薬品を持っている。助けを求めている人を救うのに、それ以上何のルールが要るのですか?」
この質問こそ、最近の「知的な」日本人の典型的な形でしょう。それが人間の暮らしと基本的にどうかかわっているか、より、ルールにどう抵触しないかしか考えない人たちです。それが今度もまったく同じように出ていました。(170〜171ページ)
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まったくそうだ。
そして東北大震災についてのことも書いてあります。
ぜひ、みなさんにこの本の182ページからの
<悲痛な義務として「喜べ」>
を本屋さんで立ち読みでいいから読んでほしい!!
産經新聞の「正論」(フナツはこれも好きでよく読んでます。名古屋で産經新聞売ってるとこほとんどないんですが、東京などで泊まるときはたいてい産經新聞読んでます)にも書かれたことらしいのですが、再録されています。
186ページくらいまでをぜひ読んでみてください!
『100人の森博嗣』(2012.3.20 tanakomo)
先日紹介した森博嗣さんのエッセイ集です。
森さんが好きな人も、あまり読んだ事がない人でも楽しめます。
特に、214ページからの「学ぶ理由」は、副題が<大学院入学の条件を考える>として、“大学院に進むべきか”という学生からの質問への森さんの回答です。
ここで森さんは、そもそも大学とはどういうところか?研究と学問とは?そして卒論と修論の違いは?などをきちんと説明し、最後に「大学院へ進学して何が良かったか?」の答えも一言で書いています。フナツはこの最後に書かれた森さんの明快な答えと、そしてこの文章全体にとても共感します。フナツも同じ事を思ったから・・。
大学院入学を真剣に考え始めている諸君に、ここだけでも読む事を勧めます。
そして、新聞社から原稿を依頼されて書いたものの、その新聞に不掲載となった「子供には新聞を読ませない」(253~256ページ)も必読です。
巻末には、旭丘高校の生徒からのインタビューも掲載されています。これもおもしろいです。
学生諸君!!書店ではどんどん立ち読みするように!
そして、感動したり、ふむふむと納得したなら、自分を知的に向上させてくれた著者にちゃんとお礼をするように!!
著者にお礼をするのは簡単です。その本を持ってレジに行き、お金を払えば、著者にお礼をしたことになります。
とても簡単な事です。
ではでは、
『つぶやきのクリーム』(2012.3.2 tanakomo)
いや、この本は読み終わるのがもったいなくて、思い出した時に少しずつお風呂の中で読んでたんですけどね(フナツの風呂本は気分によって毎日違うことがある)、まあ、日にちが経てば全部読んでしまいますよね。
『すべてはFになる』や、Gシリーズなどのミステリ、エッセイなどで有名な(最近は庭園鉄道などの本も出している)森博嗣さんです。以前このブログで森さんの『臨機応答・変問自在』を取り上げたことがあります。
そして森さんは、現在はお辞めになっていると思うのですが(まだいらっしゃるのかなぁ、はっきりとは知らないんですけど)、名古屋大学でコンクリート力学を教える工学部助教授として教鞭をとっておられました。
そんな森さん(先生と呼ぶべきか・・)のエッセイ集(つぶやき集?)を、知り合いに勧められて買いましたが、おもしろかったです。
ぜひ本のサイトのところをクリックして内容紹介を読んでほしいと思います。ひとつの「つぶやき」と、それに関する補足的文章が見開きの2ページに収められて、合計100個の「つぶやき」でこの本は構成されています。
風呂に入りながら本を読むのがフナツの幸せのひとつなのですが、一回風呂に入るごとにいくつかの「つぶやき」を読み、そしてそこから連想されるさまざまな思い(フナツとしてはそれを「思索」と呼びたいが、風呂の中ではちょっと「思索」というには散文的で、ただの物思いになってしまう)や考えをふくらませていくことがとても楽しかったです。(Sさん紹介してくれてありがとう)
ぜひ本屋さんで目次のところを立ち読みして、おもしろそうなところを読んでみてください。実にシニカルで、でもクリアで読みやすい文章です。
「日本の名言集」とまではいかないが「準・名言集」とでも言いたくなる本です。