『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』再読です。(2014.11.11 tanakomo)
たぶんまだこの本のことをブログに書いたことはなかったと思うので、再読ついでに書きます。
(すいません、今、このHP内をチェックしたら、2012年8月にtanakomoに書いてありましたね)
またまた同じ箇所でホロリ、でした。
最初に読んだとき、このくだり(かのこちゃんとすずちゃんのお別れシーン)にさしかかったのはちょうど電車の中だったんです。思わず涙がこぼれそうになって(まあフナツのことなんか誰も見てないんだけど)「なんだこのメガネえらく汚れてるなぁ」ってふりしてハンケチ出して、メガネを拭くついでに目も拭いたってのを覚えています。
さて、マキメさんのことは何度もここに書いてます(よね?)。
『鹿男あをによし』とか『鴨川ホルモー』、そして『プリンセストヨトミ』、最近では『偉大なるしゅららぼん』などなど、傑作ぞろいです。フナツが大好きな作家の一人です。
本の紹介文を紹介します(あ、なんか変)
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元気な小学一年生かのこちゃんの活躍。気高いアカトラの猫、マドレーヌ夫人の冒険。誰もが通り過ぎた日々が輝きとともに蘇り、やがて静かな余韻が心に染みわたる。奇想天外×静かな感動=万城目ワールドの進化!
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かのこちゃんがとてもいい感じに描かれているんですよね〜。
ウチの娘が小学校一年生だった頃どうだったろう、と思わず考えてしまいました。
しみじみと良い作品です、と書いておきましょう。
お父さんお母さんもいい感じ。
ちょっと無理な設定もありますが、そこはマキメさんの作品ということで、全部を楽しんでください。世俗的なところを離れて、心があったかくなる作品です。
ちなみに、フナツが持っているのは2010年に出た、ちくまプリマー新書版ですが、以下は新しく出た角川の文庫です。
ちくまのほうも、とても柔らかい印象の可愛い表紙です。
きっとちくまのほうでは絶版になりかけのを角川が版権を買ったのでしょうか・・。でも、またこの本が書店に並ぶというのはうれしいです。
ぜひ、猫好き(動物好き)の人にも読んで欲しいものです。
『ザ・万歩計』(2013.4.10 tanakomo)
エッセイですが、マキメさんなので、こちらで。
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マキメさんのエッセイ集です。
相変わらずマキメワールド全開で突っ走っています。
この本は、いろいろな雑誌や新聞、小冊子に掲載されたマキメさんの文章をまとめたもので、マキメさんらしい観点や着想、マキメさんのごくごく個人的な好みがたくさん書かれています。
そして文庫化にあたって、少々長めの現地ルポ「眉間にシワして北朝鮮」が収録されており、他のエッセイとは違って、笑わせながらもいろいろと考えさせられる内容のこの文章を読んで、マキメさんの新しい面を知るのもまた一興かと思います。
数々の賞を受賞されたマキメさんの、授賞式での裏話「現場から万城目学です」は傑作です。また、温泉とスポーツ観戦をセットにした、某スポーツ誌に連載されていた(まだ連載中かも?)、「万太郎がゆく」の脱力ぶりはまさにマキメワールドそのものだし、テレビ番組「渡辺篤史の建もの探訪」ファンであるマキメさんの、渡辺篤史へのオマージュが散りばめられた「今月の渡辺篤史」などなど、マキメファンなら必ず楽しめます。
そして「万太郎がゆく」シリーズの白眉は、アーセナルVSマンチェスター・ユナイテッド戦の観戦記です。
まずマキメさんはロンドンに降り立ち、長年のファンであるアーセナルの本拠地、新装なったばかりのエミレーツスタジアムを訪れます。スタジアム・ツアーに参加して、選手のロッカールーム他のいろいろな場所を見学させてもらい(これ、うらやましい、フナツも知ってたら絶対行った・・・)、ベンゲルの用意周到さ、深慮遠謀を知り、アーセナルショップで数々のおみやげを買います。
そして試合観戦の感動を描いているのですが、なかなかいいことを書かれているので、以下引用します。
まず、マキメさんは「万太郎は、生まれてはじめて、サッカーを観て九十分間、一度もあくびしなかった。それほど、一瞬の弛緩した時間もなく、選手たちはひたすら戦い続けた」(207ページ)と書きます。
アーセナルはその頃負けが込んでいて、絶対的であったベンゲルの首も寒くなっていたようです。
途中まではリードしていても、なかなか勝ちきれないチームの状態を反映し、2−0で90分を迎えてもアーセナルファンの不安は増すばかり、そういった状況で、最後のロスタイムを以下のように描きます。
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守りの時間は長かった。ロスタイムは何と六分。
この過酷な時間、選手たちを走らせたのは、観客の声である。ブーイングとはすなわち、コーチングである。
万太郎は、味方にブーイングを放つサポーターの意識の高さに、始終圧倒されっぱなしだった。とにかく、ぬるいプレーには即座にブーイングが飛ぶ。相手に二、三回切り返す隙を与えただけで、大ブーイングである。それまでに詰めろということなのだ。サイドでボールをクリアし、それがマンUの中央のボランチに渡ったとき、すかさずブーイングが出た。万太郎はしばらく何を指してのブーイングなのかわからなかった。どうやら、中央に人がいなかったという、ポジショニングへの指摘らしい。ラストパスを出したあとに、走らなかったことへのブーイングでもあった。
これをやられた選手は伸びるはずだ、と万太郎はうなった。アデバヨールの代わりに、九十分間トップの位置でプレーしたベントナーには、ラスト十分、ボールに触れるたび、容赦ないブーイングが発せられた。観客に叱咤され、ベントナーはふらふらになりながら走り続けた。その結果、長いロスタイムに一点返されただけでマンUの反撃を抑え、笛が鳴った瞬間、スタジアムにはまるで優勝したかのような歓喜が爆発したのである。(208〜209ページ)
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すごいなぁ・・・。選手を育てるブーイングかぁ・・・。
まったく個人的な好みですが、フナツはやはり、肉弾相打つといった感じで身体と身体がぶつかりあう音が聞こえそうな、そしてボールが行き交うスピードが早く攻守の逆転が多い、プレミアリーグが大好きです。
みなさん、6万人の(肉食人種の男たちの)声を限りの全力のブーイングって聞いたことがありますか?
フナツは一度だけですが、ロンドンのサッカーの聖地ウェンブリーでサッカー観戦をしたことがあります。数万人の男性が全力で「ウゥオーーーッ!!」っていうのは一種の衝撃波です。
競技場を覆う屋根にそれがまた反響して、物理的な衝撃となってスタジアムを(男たちの心を)揺さぶるのです。
あれは昂奮するな、うん。
ヨーロッパの男たちがストレス発散のために週末スタジアムに行くのがよくわかります。
うーん、書いているとまた止まらなくなりそうです。
では、このあたりで、
えー、と言いながらも最後に一言書いておきたい。
最近テレビでよく見るタレントと化した某サッカー選手Tが現役だった頃、あの「ドーハの悲劇」がありました。その某選手は、試合最後の数分というところで起用され、勝てば日本サッカー史上初めてのワールドカップという日本中のサッカーファン及び、にわかサッカーファンが異常に昂奮している中、一点差で勝っている場面であれば、そしてそんな特別な場面、一点を守りきればいい、なんて場面なら誰でもしなければならないこと、FWであっても走り回り、相手の攻撃の目を早めにつぶすという、そんな簡単なことができなかった。
いつものごとく、日本で試合をやるように、前線でちんたらしてました。オレたちFWはチャンスのときに全力で走るんだとばかりに・・、そして味方がピンチになっても戻ることもなく・・。
その後、相手に一点差を追いつかれ、初めてのワールドカップを逃すという事態になったことは、これを読んでいる人の多くが承知のことと思います。
選手を育てるブーイング、いいですねぇ。
以上、現場からフナツがお送りしました。
『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(2012.8.8 tanakomo)
相変わらずマキメワールド全開です。
巻末の謝辞からして笑わせてくれる、どこまでサービス精神旺盛なんだか・・。
(夏休みになったというのに)相変わらずフナツは忙しいです。
こういう本を読んで精神的にバランスを取っています。
フナツはいろんなもの(知識だとか、テクだとか、心の栄養とか・・)を本から得ています。
精神の滋養強壮に本を!!って感じですね。
授業やセミナーそのものはホントに楽しいんだけど、ホント雑用多過ぎ!!(あー、秘書が欲しい・・・、って贅沢?)
本屋さんで見掛けたら手に取ってみてください。
『ザ・万歩計』(2012.7.20 tanakomo)
フナツは忙しない毎日において、このような本に救いを求めます。リラックスするときに読む「風呂本」とはまた違う味わいの本です。
思わず「フフッ」とか「ククッ」などと笑いがもれ、ついには「アハハハッ」なんて笑ってしまう本です。
「キミタチはマキメマナブを知っているか?」とフナツはよく学生に問いかけます。「何?知らない!それは人生におけるひとつの損失である、すぐに読むべし!」などと偉そうに言ってます。
でも、
「ほら、『鹿男あをによし』とか『鴨川ホルモー』とか『プリンセス・トヨトミ』とかさ」なんて言うと、「センセー、それだったらテレビや映画のほうで知ってます」なんて言われちゃう。
それに対して、
「いやいや、映画やドラマって、それでもいいんだけどさ、本も読もうよ、ゼッタイおもしろいからさ」なんて答えてるわけです。
え?これを読んでるそこのあなた、本もドラマも映画も知らないんですか??
それは実にもったいない。ぜひどれかを手に取ってみることをお勧めします。何も考えず、どんな本か、どんな内容かも知ることなく、ただ読んでみてください。マキメさんの本は、事前情報なしに読むのがイチバンです。
というわけで、また前置きが長いですね。
さて、マキメさんの本は、実におもしろいのですが、そうとう「ヘン」な物語ですよね。
だから作者も変な人だと思ってるでしょ?
そうなんです。けっこう変な人なんです。
あー、できればこの本は電車の中では読まないほうがいいです。
「ウフッ」とか「ククッ」とか笑い出して回りの人にあなたが変な人だと思われます。
このブログを今読んでいる、仕事に追われる毎日の方々、「どれだけくだらんアホな話を書けるんじゃあー!コイツは!」という怒りとともにストレス解消してもいいかもしれません。
何はともあれ、マキメワールドへようこそ。
『恋愛は小説か』(2012.7.18 tanakomo)
片岡さんの新刊が出ました。
片岡義男さんの小説とはかれこれ30年以上のおつきあいです。
最初のうちは、片岡さんが良く書いていたテーマ、波乗りとオートバイとハワイ、そういったものに惹かれて読んでましたが、そのうちに片岡さんの描く登場人物というか、そのスタイルに惹かれて、そして片岡さんの描く世界のいちファンとしてこれまでおつきあいしてきたような気がします。
あー、ちなみに、片岡義男さんの小説は好き嫌いが激しいです。
フナツが絶賛しているからといって、誰もがおもしろいと感じるわけではないと思っています(とても残念だけど・・・)。
片岡さんが小説の中で描く女性ってどうしていつもこんなにキレイなんだろうと思います。おしゃれです。こんなふうに人生を送れたらいいなと思います。
片岡さんは、お父さんがハワイの日系人で、いわゆるアメリカ兵の息子として幼少時代を過ごしているので、普通の日本人とはちょっと感覚が違うのだろうなと思います。
片岡さんの書く小説も、どことなくアメリカのおしゃれな短編小説のような味わいだし、物語の描き方や結末の付け方が、同じ世代の日本人小説家と比べると段違いにドライです。
全然ウェットじゃない。演歌じゃないんです。
かといって「おしゃれでクールな短編小説」なんている軽いキャッチコピーで括られるような小説でもない・・。
まあ、いちファンがいろいろ書いていると思ってください。
とにかくフナツが大好きな作家であるということで。
読みながら「あー、変わってない、この世界だな」って感じで、しばらくぶりの至福の時間でした。